第2章 ムカつく女

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 守衛さんの誘導で門を入らせてもらったところで日陰に移動する。とても高校3年生とは思えない貫禄に思わず口が開いたままになる。 「・・・野口さん、口が開いてます」  飯田さんの一言で慌ててしめた。バカ丸出しだわ、あたしって。いかんいかん、と頭を振っていたら、目の前に来た美形が爽やかに笑った。 「こんにちは。お待たせしました」  飯田さんが頭を下げて挨拶をする。 「鮎川さん、すみません、昼休みに乱入いたしまして」  いえいえ、とまたにっこり笑う彼を見上げて、あたしはつい呟いた。挨拶も抜きで。 「前から思ってたんですけど・・・身長高っ!!滝本さんより高いんじゃないかな。何センチあるの?」  今回の用事には全然関係ないことは判っている。それでも聞きたかったのだ!隣で飯田さんが呆れた顔をしているかもしれないとちょろっと思ったけど。 「ボクですか?186センチです」  高っ!!そして手足、長っ!!  あんぐりとあたしが口を開けているとそれを見て面白そうに笑っていた。 「薫さん、髪切ったんですね。ボク黒髪好きです」  ・・・口説かれた・・・わけではないよね、と激しく瞬きをしてしまった。違う違う。好きなのは、黒髪っと。この子にはラブリーな彼女がいるんだから。  きっと必ず女性は褒めるのだろう。いい教育を受けてるぞ、この子。あたしはまじまじと目の前の高校生を見詰めた。  そのストーカー事件で、あたしもちょっとお手伝いをしているのだ。それで彼とは面識がある。  その当時のあたしはカフェの岡崎店長、バイトの守君、そして滝本についでこの子にまで囲まれて、周囲はイケメン花盛りだった。その点で、非常に幸せだったと言っておこう。あれほど女子力が自動的にアップした時期はなかったのだから、やはり外見の良さが他人に与える影響ってのは凄いな、と思ったのだった。  コホンと空咳をして飯田さんが会話を元に戻そうと頑張っている。邪魔してすんません・・・心の中で謝っておいた。 「ええと・・・今日伺ったのは、ですね。この17日にうちの所長と話をされたと思うのですが・・・それは案件の終了報告で宜しかったんですよね?」
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