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「声がデカイ」
その場の全員が同時に言った。誉田君はあははは!と笑っている。
「まあ、取りあえず、食べましょうか」
湯浅女史の一言で、ぞろぞろと応接室へ移動する。
一つしかない応接室で桑谷さん達が調達してきたお弁当を全員で囲む。その光景の中に滝本がおらずあたしがいることが、改めて不思議だった。
あたし、何でここにいるんだろう・・・。行儀悪くお箸をくわえながらぼんやりと周囲を見渡してしまう。
湯浅女史がお茶を淹れてくれて、皆で食べ始めた。一応テレビつけとけ、と桑谷さんが言うので飯田さんがテレビをつけニュースを流しっぱなしにした。
「で、どうだったんだ、高校生は?」
桑谷さんの質問に飯田さんが答える。
「やっぱり所長は余計なことは話してないようでした。あの事件の完了報告だけらしいです」
「・・・となると、やっぱりあの女だな。くそ。お前が弁当選びにあんなに時間かけなきゃ、今頃年齢に住所くらいは調べられてたんだぞ」
目を細めて桑谷さんが誉田君を睨む。いきなり迫力がまして、あたしは思わず身を引いた。
誉田君もおどおどと、今度は笑わずに謝る。
「す・・・すみません。でも、食べるものは大事でしょ?」
めげてないじゃん、この人。あたしが突っ込みながらガツガツ食べていたら、湯浅女子がいきなり大声を上げたからむせた。
「あら・・ちょっと!桑谷さん!」
「うん?」
どうしたー?と桑谷さんが振り返ると、湯浅女史はテレビを指差しながら固まっている。皆で何事かと耳を澄ました。
テレビの画面では別嬪の女性アナウンサーが真面目な顔で緊急ニュースを読み上げている。テロップに流れる文字を目で追うと、立てこもり事件が起きているらしかった。
場所は―――――――・・・沖縄。
『緊急ニュースをお伝えしております。先ほど入った情報によりますと、沖縄のショッピングモールを占領していると見られる犯人は20代の男の3人組と見られ、現在買い物客53人を人質にして立てこもっております。人質全員の持ち物が集められて犯人によって外に出されました。警察が私物の確認をしたところ、判明した方は―――――』
画面にどんどん出される人質とされた人達の名前、その中に、小川まり、と名前が流れていた。
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