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「・・・なんてこと・・・全く、信じられないわ、あのクソガキ!」
クソガキ・・・滝本のことだろうなあ~。ううーん、やっぱり口悪いよこの人。
綺麗に化粧した顔は般若のようだった。あたしはそれを見ながら、ああ、そうか、ヤツの口の悪いところは遺伝なんだな、などと思っていた。
彼女は唇を歪ませて笑顔のようなものを作ると、ふんと鼻で嗤った。
「警察?好きにしなさい。あの子は元気でいるわ。警察がこようと痛くも痒くもない。ここは、私が必ず貰うわよ!」
そして勢いよく体を回転させると、カツカツと激しく音を立てて事務所を出て行った。ドアも開けっぱなしで。
行儀の悪いオバサンだ。それをあたしに言われるなんて結構だぞ。
誉田君が今にも走り出しそうな体勢で振り返った。
「つけますか!?」
手がすでに車のキーを掴んでいる。
飯田さんが一瞬考えるような顔をして、頷きかけて、あたしに気付いた。
そして、にやりと笑った。
「その必要はないよ、誉田」
「どうしてっすか!?行ってしまいますよ!今追わないと―――――」
イライラと飯田さんを見る誉田君は、その飯田さんが指差す方向を見て、絶句した。
そこにはあたし。
あたしの手には、女物の派手な財布。
「・・・まさか、それ」
誉田君が言うのにあたしは頷いた。
皆で紙切れを覗きに殺到した時に、彼女の鞄からすり取っておいたのだ。そして背中に回した後ろ手に隠し持っておいた。
「これで、手間が省けましたね」
湯浅女史がコロコロと、それはそれは楽しそうに笑った。
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