第2章 ムカつく女

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「・・・なんてこと・・・全く、信じられないわ、あのクソガキ!」  クソガキ・・・滝本のことだろうなあ~。ううーん、やっぱり口悪いよこの人。  綺麗に化粧した顔は般若のようだった。あたしはそれを見ながら、ああ、そうか、ヤツの口の悪いところは遺伝なんだな、などと思っていた。  彼女は唇を歪ませて笑顔のようなものを作ると、ふんと鼻で嗤った。 「警察?好きにしなさい。あの子は元気でいるわ。警察がこようと痛くも痒くもない。ここは、私が必ず貰うわよ!」  そして勢いよく体を回転させると、カツカツと激しく音を立てて事務所を出て行った。ドアも開けっぱなしで。  行儀の悪いオバサンだ。それをあたしに言われるなんて結構だぞ。  誉田君が今にも走り出しそうな体勢で振り返った。 「つけますか!?」  手がすでに車のキーを掴んでいる。  飯田さんが一瞬考えるような顔をして、頷きかけて、あたしに気付いた。  そして、にやりと笑った。 「その必要はないよ、誉田」 「どうしてっすか!?行ってしまいますよ!今追わないと―――――」  イライラと飯田さんを見る誉田君は、その飯田さんが指差す方向を見て、絶句した。  そこにはあたし。  あたしの手には、女物の派手な財布。 「・・・まさか、それ」  誉田君が言うのにあたしは頷いた。  皆で紙切れを覗きに殺到した時に、彼女の鞄からすり取っておいたのだ。そして背中に回した後ろ手に隠し持っておいた。 「これで、手間が省けましたね」  湯浅女史がコロコロと、それはそれは楽しそうに笑った。
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