第2章 ムカつく女

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 誉田君が困ったように聞く。 「それ、どうするんですか?」  飯田さんがそのままあたしを向いたので、意見を求められてるんだと解釈してあたしのやり方を答えた。 「どっかの交番に放り込みます」  ああ、成る程、と飯田さんが頷く。そんなわけで、ビニール袋に入れたそれは慣れているって理由であたしが処分することになった。  現金は頂いちゃダメだよね、と口の中で小さく呟く。・・・ダメよね、やっぱ。 「現住所はここです。俺行ってきましょうか?」  既に興奮状態の誉田君が飯田さんに聞くと、しばらく間をあけて、飯田さんは首を振った。 「・・・いや、そこに所長がいるかが定かでないし・・・」  口元に片手を持っていって、窓の外に視線を向けている。隣で誉田君が先輩のゴーサインを待ってうずうずと体を揺すっているのが邪魔だった。  軽く頷いて、飯田さんが言った。 「取り合えず様子を見に俺が行ってくる。もしかしたらあの人がまた戻ってくるかもしれないからお前はここに居てもっと情報を調べてくれ。冷たい対応でいい。湯浅さん、一応警察に連絡いれてもらえますか?」 「判りましたー!!」 「了解です。生田刑事でいいんですよね?耳にいれとくって程度で?」  飯田さんが湯浅さんに頷いて、あたしを振り返った。 「一緒に来ますか?」 「はい」  勿論だ!思わず、両手の指を鳴らしてしまったあたしだった。  ・・・まってろクソババア。  ほの暗くなってきた夏の街を、飯田さんと車で走る。 「・・・文字、やばかったですよね。へろへろ」  あたしが言うと、前を見たままで飯田さんが頷いた。 「どんな状態なのか判りませんが、弱ってることは確かでしょうね。でも頭はハッキリしてるんだと思います。あれ、わざとですよ、署名間違えなんて。湯浅さんなら気付くと思ったんでしょうね」  確かに。一緒に見せられていたのに、あたし達は憤慨することに忙しくて委譲証なるものをじっくりと見ていなかった。  湯浅女史だけが一人冷静に熟読し、間違いを発見したのだ。
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