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「調査会社なんて手にいれてメリットあります?」
「・・・そこがよく判らないんですが・・・うちはメジャーではありませんがその筋では名前が売れているようですから、金儲けに使うつもりなんでしょうね」
飯田さんが考えながら話す。あたしはそうだ、とパッと運転席を見た。
「本当に辞めちゃううんですか?」
飯田さんはいつもの無表情でちらりとこっちを見て、また前を向く。
「―――――雇い主が所長でないなら、辞めます。でもそんなことにはならないでしょう。私たちで所長を見つけ出し、ちゃんと復活してもらいますから」
・・・・おお。今、強い意志を感じたぜ。
あたしは足を畳んで座ったままで前を向く。ビル群に沈んでいく夕日の残像をみていた。
・・・あたしは。
あたしは、ヤツが生きていれば、取り合えずはそれでいい。今はまだ判らない。滝本に何かが起こったなんてイマイチ信じられない。だって、あの不敵に笑う男が・・・。
どうしたいのかは一つだけはっきりしている。
滝本の母親だとかいうあの女、あの女を排除して、滝本を見つけ出す。
あたしには母親なんて人は小さな頃からいないから一般論は知らないが、それでもあの女は母親なんて威張って言える人種じゃあないだろう。
あの怒った時の、ののしり。思い通りに行かなかったのが息子の仕業だと判って激昂したあの顔は。
とにかく、まともな滝本に会うこと。
全部はそれからだ。その後どうするかは自分でも判らない。でも関係ないからと放り出すことは考えられない。それほどの容量を、あの男はあたしの中でしめてしまっている。
・・・ちっくしょう・・・。
あたしったら、もう。
車で1時間ほど走り、掏り取った財布の情報から行き着いた先は、豪華なマンションだった。
それを少し離れた路上に駐車して、車の中から二人で観察する。
「・・・やっぱり金持ちなんですかね」
「みたいですね。オートロックで、多分鍵がないとエレベーターも動かせないタイプのマンションでしょうね。6階では外から登るわけにもいかないですし・・・」
うーん、と唸りながら飯田さんは忙しく考えているようだ。
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