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あわよくば、あの女から鍵をすりとってやろうと思っていたことがバレたのかと思った。
「あなたを守れないと、所長を見つけても私が所長に殺されます。そんなことはごめんです。―――――――いいですか?」
「・・・はい」
仕方なく、あたしは頷く。
この指で出来ることなら、出来ることがあるなら、それで前進するなら、あたしはすぐにでも行使したい。
だけれども目の前で真面目な顔をする飯田さんには頷くしかなかった。
ううう・・・動けないなんてストレスだ。
あたしの返事に軽く頷くと、飯田さんは真面目な顔を消した。
「さて、では、野口さんは申し訳ないですがここから一人で帰ってもらいます。私は今晩はここで張り込みます。富永が財布をなくしたことに気付いてまだ帰ってないと考えるほうをとりますので、彼女がここに戻るのを見ておきたいんです」
あたしは肩をすくめて頷いた。
「じゃあここで。帰りにあのババア・・・失礼、あの人の財布は処分しときますので」
宜しくお願いします、と飯田さんが言い、携帯電話を取り出して事務所の誉田君と連絡を取り出した。
「また明日事務所に行きます」
あたしの言葉に頷きで了解と伝えて、誉田君に見て判った状況と張り込みする旨を伝えている。
あたしは車から降り立った。
そしてちらりと豪華なマンションを見上げる。
あそこに、いるんだろうか。
滝本は。
だらだらとそこから最寄の駅までを歩く。
ぼーっと嵐のような今日一日を振り返っていた。
髪を切って、桑谷さんと会い、滝本の部屋へ行って、女の名前が判り、すると桑谷さんが舞台から消えて、代わりに滝本の母親が登場した。
・・・一日でこれだけのこと、いいの?
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