第3章 ぼやける視界

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 選んだ方法は、漫画喫茶にいくことだった。  最寄の大きな駅前には24時間営業の漫画喫茶がある。  一昨年、岡崎さんのカフェでバイトしていた守君と焼肉で飲んだ後、あたしがそこで一晩過ごそうと企んだのを知った守君に叱られたんだっけ、と懐かしく思い出した。  それで、その時は守君に強制的にお持ち帰りされて、彼を酔い潰れさせたあたしなんだった。あははは、思い出した。  守君、元気かな~。  たらたらと漫画喫茶まで歩く。懐かしい子犬系美男子を思い出して、ちょっと気分も持ち直していた。  何でもポケットに突っ込んでいるあたしがジーンズの後ろポケットから会員カードを出して、いつもの指定席へ向かう。  もう今日は眠らなくていい。  ろくな夢を見そうにないもの。  それだったら―――――――・・・と思って、お気に入りから次々に読み出した。  先ずは王道「ぼくたま」、それから懐かしのリボンコミックスをバンバン読み、そしてララへとうつる。眠くなってきたらジャンプ系にいって脳みそにカツを入れるってのがいつものパターンだった。  たまーに、手塚治虫全集なんかでリラックスもしたりして。  飲み物を取る以外はほとんど動かずに、椅子の上であぐらをかいてガンガン漫画を読んでいた。  没頭できるから素敵よ。ふと顔を上げたら時計は既に午前1時をさしていて、流石に目が凝った・・・と一時休憩をする。  椅子から立ち上がって伸びをした。お腹、減った・・・。そういえば晩ご飯食べてないじゃん、あたしったら。  ホームシックのようなざわざわした気持ちとべたべたするカップルから受けた不快感は消えてなくなっていたから、あたしは首を回して漫画を仕舞いにいく。  ・・・うーん。結構、すっきりした。お腹すいたよなあ~・・・どうしよう。もう帰ろうかな、やっぱ。  読みかけのスラムダンクも取り合えず仕舞う。主人公はバカだけど、あたしにはない情熱があってやっぱ笑える。これと幽幽白書は外せないぜ。  よし、と決めてレジへ向かった。 「あれ、帰るんですか?」  馴染みの店員さんが不思議そうな顔をする。  あたしがここに来るときはいつでもお泊りパターンだったから、今日も泊まると思ってたんだろう。  大学生くらいの店員に微笑んで、ポケットから出したお札で支払う。
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