第1章 消えた滝本

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 首を捻って閉まっているドアを見詰める。  何かの雰囲気・・・・また、重い空気だ・・・・。何かが、旅行に行く前と違っている。  あたしは眉間に皺を寄せる。  ガラスドアからは明りがもれている。だから中に誰かはいるはずだ。  無意識に深呼吸してからあたしはドアノブに手をかけた。  ガチャリ・・・と音を立てて古いドアは開く。その隙間にあたしは頭を突っ込んで、声を出した。 「・・・こんにちは」  中にいた3人の人間がパッと振り返った。そして全員で叫ぶ。 「―――――野口さん!!」 「・・・はい?」  驚いた顔のまま固まっているのは飯田さん。40代(推定)の独身(これまた推定)男性で、ここのナンバー2だ(多分)。  じっとあたしを見詰めているのは事務作業全般を請け負っている大事な歯車、湯浅女史(同じく推定40代後半そしてやっぱり推定独身)。  そして一つだけある応接室の入口で突っ立っているのは若手の誉田君(推定、おそらくあたしとそう歳は変わらないはず。彼だけは確実に独身)。  3人の視線を一斉に浴びて、あたしは中途半端な立ち位置から動けずにいた。  ・・・迷惑・・・でもなさげだけど、歓迎!って感じでもない。  一体何??  同じくあたしも固まっていると、その状態からいち早く動きだした湯浅女史が、微笑みながら近寄ってきた。 「・・・の、野口さん!久しぶりね、今までどこへ・・・」  その一言で魔法が解けたようで、あとの二人も動き出した。 「野口さん!!お久しぶりです!!」  相変わらず馬鹿でかい声で喚きながら誉田君も飛んでくる。そして飯田さんも、珍しく微笑を浮かべていた。 「―――――こんにちは、野口さん。ええと・・・所長は?」  ―――――――はい?  あたしは瞬きをする。そしてぐるりと皆を見渡した。心なしか3人の目には期待が満ち溢れているように見える。 「・・・滝本さんですか?」  あたしの声に、3人とも同じような怪訝な顔をした。
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