孤独な冬休み

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まずは将来への不安だった。 このまま順当にいけば、大学は卒業出来る。先に控える国家試験とて、合格率は八割だ。しっかり勉強をすれば、落ちることは考えにくい。そして学校を卒業したら、後は就職して働くだけだ。 だが、彼にはその後が問題なのだった。 それと言うのも、彼は自分一人の力で朝起きることが出来ないのだ。なんとも情けないことであろうか。小学生、いや下手をしたら幼稚園児でさえ出来ることが、大学四年生の齢二十二の男には出来ぬのだ。 目ざまし時計を設定したとしても、必ず気が付いた時には授業開始前、もしくはもう既に始まっているような時間なのだ。この様な〝遅刻魔〟とでも呼ぶべき彼でも卒業間際に至ることが出来たのは、一応は友人と呼べる存在がいた他にならないだろう。 また、問題はそれだけに止まらない。彼の母は昔から所謂〝イイヒト〟で、お節介くらいに彼の周りの世話を焼いた。
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