孤独な冬休み

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そしてそれは今も続けさせてしまっている。彼は学校を実家通いしているのだが、大学へと通う手段が母による車の送迎であった。 入学当初は自転車や電車、学校から出ている私学バスを乗り継いで約二時間掛けて学校へと通っていたのだが、車は凄いもので、ほんの三十分しか掛からない。 だから、こうして甘えてしまっていた。 彼は自分一人では何もすることが敵わないのだ。なのに、残酷にも月日は過ぎ、彼は歴とした大人になろうとしていた。 いや、既に年齢は大人なのだろう。彼はそれを頭では理解していた。 だが、彼の子供的な裡なる部分ーー未成熟な精神がそれを許さなかった。 まだ自分は学生だーー。 そうした甘えが彼のみっともない自尊心を過大化させ、自己嫌悪、現実逃避を引き起こすのだ。最近では自殺という二文字さえ頭を過る有り様だ。 また、彼の愛犬の高齢化もまた、彼を憂鬱にする一つの原因であった。
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