孤独な冬休み

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彼の家庭には小学六年生の頃から飼っている愛犬がいる。その犬は今年で十歳になるのだが、人間で言えばそれは齢七十を超える高齢である。 故に、年相応の身体の変化が嫌でも目に着いてしまうのだ。まず、幼少期は濃く茶色であった毛色が、近頃では顔だけではあるものの、白く豹変していた。写真を見比べれば一目瞭然で、その違いは火を見るよりも明らかであった。さらにそれには止まらず、白内障を患ってしまったのだ。高齢化には付き物とさえ言わしめるほど多くの人間が罹る疾患だが、それは犬とて例外ではない。今はまだしっかりしているが、それがこの先何年続くか、もしかしたら年さえ越すこともないかもしれない。 そうした〝加齢〟という自然が、少年の心をへし折ろうと圧をかけ続けているのだった。 そして、それは刻々と限界へと達しようとしていた。 そうした時、彼は願うのだ。
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