孤独な冬休み

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俄かに信じがたい事であった。しかし、老人の言葉を信じるとするならばそれはーー 「じゃっ、じゃあアンタは……」 「そうだ。私は未来のお前だ。 お前がこの時抱いてしまった願いを、愚かにも叶えてしまった愚かなお前だよ」 少年は改めて老人を見る。確かに、今の少年の特徴と重なる点は多々見当たる。例えばーー 右目の下の泣き黒子。しかし、そんな普遍的な物で彼はまだその現実を認める訳にはいかなかった。 「右腰の古傷。左眉は幼少期負った切り傷により生えが悪い」 老人はまるで彼の思考を見抜いたかのように追い討ちをかけた。しかし、その口調はどこか疲れ切っていた。 「往生際が悪い。まだ足りぬと言うのならーー」 「もういい、分かった分かった」 証拠は最早十分であった。これ以上挙げられても気味が悪くなる一方なので、彼は手を振って早急に打ち上げさせた。 「それで、未来の私が一体何の御用でしょうか?」 彼は自分が思いの外、この特殊な状況に順応していることに問いを口にしてから気が付いた。老人は、その問いに口元にたくわえた髭を弄りながら答える。 「先程もちらっと言ったが、私はな、お前がたった今抱いたその愚かな幻想を打ち砕きに、わざわざ未来からやってきたのだ」 老人は言葉を切る。目の前の老人は尻餅をついたままの彼を見詰め、そしてまた口を開く。 「お前のその『刻を殺す』という願いは人類繁栄とごろか、世界を今滅ぼさんとしている」 「…………は?」 彼はみっともなく口を開けたまま、目の前の老人を見上げることしか出来なかった。 ーー刻を殺す。 確かに少年はそう願った。だが、そんな大それた願いは、思うだけでは叶う事などあり得ない。 「…………そんなーー「あり得ぬ、か? だかな、貴様は叶えてしまったのだ。現実として。 全く。こんな腑抜けにこのような行動力があるとは、自分事ながら甚だ信じることが出来ん」
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