第4章

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第4章

その翌日――。 何もなかったように和樹は起きてきて。 「ごきげんよう、博巳先生」 荷物をまとめて 今にも逃げだそうとしていた僕に笑いかけた。 「やめた方がいいですよ、出て行くなんて」 玄関ホール。 長いガウンを引きずるようにして近づいてくる。 「でも僕は……」 「今逃げだしたら征司お兄様がどうなさるか……冬休みが終わるまでの辛抱です」 その方が賢明だ――なんて至極冷静に。 赤い唇は囁きかける。
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