【前編】臆病な勇者の昔話

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【前編】臆病な勇者の昔話

 勇者と魔王による戦いの物語が繰り返し行われた時代。身を切り裂くような冷たい雪風が吹きすさぶ寒冷の森に、二人の旅人が迷い込んだ。  こんな吹雪の中で野宿などしたら二度と起きられまい、と夜中の森をさまよっていた二人は、隠れるように建てられた小さな家を発見する。  家にいたのは若き美丈夫の魔法使いだった。魔法使いは凍える二人にタオルを差し出すと、早く暖炉で温まるようにと快く招き入れた。  人心地が付いた二人に、魔法使いは湯気を立てる紅茶を差し出しこう言った。 「二人がよければ、昔話を聞いてはくれないか」と。  旅人たちの承諾を得て、魔法使いは語りだす――。
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