エピローグ

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両手を叩いて手袋にこびりついた雪を落とすと、次の木の雪落としにかかる。 雪の下から現れた松かさから、松脂がほのかに香る。 夙川の松並木が懐かしく思い出された。 少し身軽になった松の木を眺めてから手袋を外し、ポストを覗きにいく。 ポストには何通かのダイレクトメールと、葉書が一枚入っていた。 文面を見た私はダイレクトメールをポストに戻し、葉書を持って家のすぐ横にある堤防の土手を上った。 考え事をする時のいつもの場所だ。 あの日と同じように、馬洗川の河原は真っ白に雪に覆われている。 河原の真ん中までやってくると、私は香穂の追悼会のハガキを眺めた。
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