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やがて行為の余韻が身体の芯にじくじくとした熱を残すだけになると、ベッドを出る前に目を閉じて、もう一度彼の肌の匂いを吸い込んだ。
こんな時、私はいつも終わりかけの線香花火を思い出す。
身体の奥でくすぶる疼きも自分自身も、今にも落ちそうな火の雫みたいだ。
揺らさないようじっと息を詰めていると、雫は必死に熱を留めて膨らむのに、やがて自ら手を放すように落ちていく。
大きく膨らむほど、それは短命だった。
きっと雫は自分の運命を知っているのだと思う。
私もまた心とは裏腹に、篤史のベッドに長く留まることはあまりしなかった。
ただひとつだけ──
雪の降る夜を除いては。
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