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しばらく地元の話や篤史の仕事の話をしていたけれど、ふと会話が途切れた。
「……私ね。雪を理由にしてたんだと思う」
私が唐突に言うと、篤史が食べるのをやめて顔を上げた。
彼は静かにうなずいた。
「俺も」
篤史は分かってくれている。
私たちはずっと同じ想いだったから。
そのまま二人ともまたお鍋に顔を戻したけれど、最後ぐらいは正直になりたくて、一つ小さく息を吐き出してから続けた。
これを言ってしまうともう後戻りできなくなると思いながら。
「雪が降ると、朝まで一緒にいられる、って」
篤史は箸を置き、しばらく考えてから、私が好きな表情を浮かべた。
笑顔の一歩手前の、優しい表情だ。
「雪が降ると、結子に構ってもらえる」
子供のようなセリフに二人で顔を見合わせて笑い、また箸を動かし始める。
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