エピローグ

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追悼会は今年でもう五度目になる。 私の勤めるホテルが廃業したため、去年は小さなレストランで行われたらしい。 先日電話で香穂のお母さんと喋った時、引っ越しや出産で年々参加者は減っていくけれど、細々と続けていくと言っていた。 『比奈子は社会人になってすっかり遊び人になっちゃったわよ。あの子、男の人を散々振り回してるんだと思うわ。ろくに家に帰って来やしないの。困ったものよ』 そう言って笑っていた。 いつか香穂が予言した通りだと苦笑いが漏れる。 『でもね。私が寂しくてたまらない時、必ずあの子は帰って来るの。親子って通じるものなのかしら。不思議よね』 ハガキを胸に抱き、空を仰いで懐かしい人々の顔を思い浮かべる。 このハガキが届く季節になる度、雪が降る度、私は天上の花と残された人々に思いを馳せる。 去年は都合がつかず出席できなかった。 今年は行けるだろうか。 でも、たとえ行けなくても、雪が降る度、遠い空の下でそれぞれの思いは一つになるのだと思う。
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