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ドアの先は食堂に繋がっていた。テーブルクロスが敷かれたテーブルは、長方形で、部屋の端から端まで長く、中央を陣取っていた。一体何人家族だったらこのテーブルを活用できるのだろうか。少なくとも10人以上は収まりそうだ。
「律子?」
ヒカリは食堂の奥で蹲っている律子を発見し、彼女の元に駆け寄った。律子は髪を一本に結んで、眼鏡を掛けており、真面目を絵に描いたような女性だ。もう少し色気に気を使えば、男子からもモテるだろうけど、彼女にその気は無いらしい。そんな彼女が青白い顔をして、僕らの方を見ている。
「どうしたんだ?」
「が、骸骨が、骸骨がああああ」
律子は、部屋の隅の暗がりを指しながら、腰を抜かしていた。何とそこには彼女の言葉通り、白骨化した死体が壁に背中を付けてもたれていた。
「何だよこりゃあ」
健一は背負っているバッグから懐中電灯を取り出すと、それで暗がりの方を照らした。そこには確かに骸骨があった。しかし、肉などはこびりついておらず、死後かなりの時間が経過したのだと考えられる。
「孤独死ってやつかな?」
僕は律子に肩を貸しながら言った。前に講義で習ったことがある。最近は老人の孤独死が急増していると。それに、こんな田舎町に豪邸を建てるような人物だ。さぞ偏屈な人間なのだろう。家族から見放されて、一人寂しく豪邸で独り暮らし、有り得ない話じゃない。
「ねえ、一度最初の大広間に戻らない?」
ヒカリは快活な彼女らしくなく、暗めの声でそう言った。この館には僕ら4人以外に人はいないようだが、この先何が起きるかも分からない。全員で玄関の前の大広間にいるのは、決して間違いじゃない。
「そうだね。戻ろう」
僕はヒカリの意見を後押しすると、皆で大広間に戻ることとなった。健一の奴は少し残念そうにしていたが、これはゲームじゃない。こういう異国情緒溢れる洋館が好きなのは分かるが、とても探検ごっこに興じる気にはなれない。
「さあ、戻ろう」
僕らが大広間に繋がるドアに手を掛けたその時だった。
「ゥゥアアア」
何処かから、男性、それも老人と思わしきしわがれた声が部屋内に響き渡って来た。この館には僕ら以外の人間がいるのだろうか。
「おい、聞こえたか?」
健一が懐中電灯で僕の顔を照らしながら聞いて来た。僕は静かに頷いた。
「この館の住人だな。事情を話して、今晩泊めてもらおう」
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