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~榊奏~
突如として辺りを満たす膨大な魔力、流石ともいうべきか。
「まさか二体目とは……」
オセローで両腕と両足を打ち抜く、多少無理はするがこの際関係ない。
体の周りを守るように展開された血液のバリア、驚くべき速度で削られるそれを眺めながら思う。
グリムヒルト、最強と謳われし魔女、探し求めていた魔女。
最強たる所以は二体もの悪魔を使役しているからか、まったく俺も詰めが甘いな、もう少し調べておくべきだったなグリムヒルトという魔女について。
そんなことを考えているうちにとうとう砕かれたオセロー、破壊の魔力が全身に襲い掛かる。
あぁ、痛くもない。
痛みはマヒして、感情というものも希薄になってきた、それを隠すために大袈裟に笑って見せたり、したくもない笑顔を作って見せたり……本当に大変だ。
徐々に薄れる破壊の魔力、ボロボロになった体を仰向けに暗い空を見上げる。
星なんてものは見えない。
「奏くん、本当はどうしたいの?」
悲しい瞳をした、綺麗な青い瞳をした聖、彼女は俺を見下ろしてそう聞いた。
「奏くんねー、おまえ俺はどっちだと思う?」
「奏くんは最初から出会った時から本当は今のままだよ、私は見たくなかっただけで本当は解ってた」
そう俺は最初から何も隠せてはいなかったのだ、いくら笑顔を作ってもそれは偽物の笑顔。
ならば俺の目的もこの際話そうか、この魔女グリムヒルト……いや剣城聖という女の子に、一切隠すことなく、俺の本来の目的、最強の魔女グリムヒルトを探していたわけを。
「シェイクスピアなんてどこの言葉かもわからない名前を付けられて、なぜ魔殺師という現代版魔女狩りをしているのか……簡単だ俺は力がほしかった、俺にこんな下らない悲劇を演じさせた異端審問官を皆殺しにするために……」
異端審問官、魔殺師を統括する五人の魔女狩という最強クラスの対魔女武器を持つ者たち。
魔女と魔殺師、悪魔と対魔女武器の全てを知る者たち。
「でもな、俺だけの力で奴らには勝てない。だからお前を探してたんだ……まぁ人殺しに協力しろとは言わない……ただ一緒に戦ってほしい」
さっきまで殺し合っていた二人、そして俺は理不尽で身勝手なことを言っている。
それでも俺は、そうしてでも俺は奴らを殺したい。
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