第一夜~絶望~

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「奏くん、私はもう戦いたくないんだ……だから……」 本当に笑えない、計算外のことばかりだ。 「そうか、ならそれでもいい……俺は一人でもやって見せるさ」 「だめ!奏くん、この勝負は私の勝ちだよ……だからお願いこれは絶対……もう戦わないで一緒に普通に生活しようよ」 無理だとわかっているくせにいまだに希望を捨てないでいる、普通通り過ごすなどあり得ない。 それに……。 「剣城聖、悔しくないのか……知りたくないのか……お前を無理やり悪魔と契約させて魔女にした奴らのことを……お前の両親のことを」 「……え?」 完全に混乱した様子の聖、俺が残していた切り札……できれば使いたくはなかったのだがしょうがない。 「もうすでに死んではいるが……元異端審問官であるお前の両親……最初の犠牲者としてお前を選んだ狂った両親……俺が殺した災厄の始まりを生み出した二人」 「……そう……それも実は知ってた……といってもさっき教えてくれたんだ、私の中の悪魔たちが」 それから聖は語ってくれた、悪魔に聞いた話を、俺も知っている話だったが黙って聞いた。 悪魔の話を……悪魔と契約した魔女の話を……。 …… それではまず悪魔の話をしよう、魔女を魔女たら占める存在である悪魔。 それぞれ固有の能力を持ち様々な姿をしているという存在、生き物というよりも魔力の塊が生き物の形を作り出しているのだ。 そもそもなぜ悪魔というものがこの世界に生まれ、存在するのだろう。 聖によれば、この世界ではない別の世界で過ごす人間が無理やりこの世界に引きずり込まれて、異界の力に対応できないで変異した者が悪魔だという。 恨みや憎しみといった負の感情を個々の能力へと変えて発現させたそれが魔法。 悪魔の正体は人間だったのだ。 もとは人間だったという悪魔、それを契約という形でその身に宿し自由に力を扱う魔女、彼女たちはいったいなぜ魔女となったのだろう。 『それは私が説明してやろう人間』 純白の翼を持った、巨大な鳥獣型の悪魔、崩壊を司る崩壊のバルバドス。 『さっきはよくも聖をいたぶってくれたな……本来なら貴様はこの世界から消えているのだが聖の好意だ、感謝するのだな』
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