第一夜~絶望~

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~剣城聖~ 「はー……もう疲れたよ」 私は榊奏と別れて帰宅していた、安いアパートの一室決して広くはないが一人で住むには十分だ。 『ねえ聖、あの奏とかいうやつはお前を自分の下らない目標のための駒としか見ていないぞ、それでもお前は……』 「いいんだよ解ってる、でもね……私奏くんのこと好きになっちゃったから」 『聖、お前は変わってるな、あんな狂人のどこがいいのか我にはさっぱりわからんよ』 狂ったような言動は彼の持つ対魔女武器"悲劇"の副作用みたいなものだと言っていた。 それに彼は魔殺師シェイクスピアと名乗っておきながらも、私の奏くんと呼んだ声に反応してくれた。 戦いの中で彼は何を考えていたのだろう、何を思ってあんな人を狂わす力を扱っていたのだろう。 『我は思うのだが、協力を求めるつもりだったにもかかわらず襲ってきたのは本当に理解できない、本気で消し炭にしてやるつもりだったのに』 『それは私も同感だな、奴は一度半殺しにしないと気が済まない』 「二人とも物騒だよーそれに別れる前に言ってたでしょ。私が貴方たちの封印を解くように誘導したって……まぁ確かに死にかけたけど、生きてるし……」 『聖、お前は優しすぎるよ。まぁ久しぶりにお前と話せるからよかったが、もし聖が死んでしまうような状況ならば私は……』 悪魔と呼ばれ忌み嫌われている彼女たち、私にはなぜ本の中で彼女たちが悪く書かれるのか理解できない。 こんなにも優しくて、私のためにいろんな感情を見せてくれる彼女たちはこの世界のだれよりもきっと優しい。 だから私は封印したんだ、この世界の穢れは私一人で受け止めると誓って。 けれど無理だった、でもね、彼女たちはやっぱり優しい。 封印したことに何一つ文句を言わず、私とまた話せると喜んでいる彼女たちは本当に愛おしい私の最高の友達だ。 「私ね、ほかの魔女にも会ってみたいなーってそう思ったの、奏くんといればなんかね何でもできそうな気持になる」 だから私も自分の目標を持つことにした、魔女とよばれる人たちに会いたい、会ってどうすると言われても答えられないけれど。 『そうか、あまり気は乗らないが聖の言うことなら』 優しい悪魔二人と魔殺師を名乗る同級生榊奏。 貴方たちと一緒に私は……私も誰かのために生きるよ。 ~Grimhild Prelude End~
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