第一夜~絶望~

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~剣城聖~ …… 魔女。 それは現代社会において今一番問題視されている存在であり、存在がほとんど確認されていない都市伝説的存在である、いうなればトイレの花子さんや口裂け女といったメジャーな都市伝説の一つとして確立しているモノなのだ。 しかし、それが都市伝説という噂話でとどまるどころか瞬く間に日本中、世界中に広まってしまっているということはこれが、魔女という存在が事実として現実世界に存在するという一つの証拠であり根拠ともいえる。 一説によれば政府が秘密裏に隔離している生物兵器という噂や、非人道的な人体実験の産物という噂など話は膨らみ日常の会話で耳にしない日はない。 真偽が定かでない噂話がここまで広まっていると思うと素直に感心してしまう、いったいどんな方法を使えばこんな突拍子もない話が広まるのだろう。 魔女という何とも曖昧な存在、時にはファンタジー世界の悪役、時には正義の味方魔法少女、時にはどの勢力にも加勢しない中立、物語のキーパーソン的な立ち位置。 年齢もバラバラで役割も定まらない、なんとも不安定な存在である魔女。 しかし、一つだけ……たった一つだけ、どの物語であっても、どの立ち位置であっても、どの年齢であっても一つだけ、魔女という存在の共通点がある。 それは……。 魔女は全員女性ということだ。 教室で自分に与えられた席に座り、無意味にノートの白紙のページを開きシャープペンシルを突き立てて、無意味な思案にふけっていると正面に見知った顔が心配げに私を見つめてきた。 「聖、またぼーっとしてる。どうしたの?」 目に掛かった前髪の隙間から見つめ返す、ショートヘアで活発な印象の女の子、私が友達と呼べる数少ないうちの一人『佐藤香奈子』明るい性格でクラスのムードメーカーのような存在、その行動力と言ったら男子に負けないくらいだ。 そんな数少ない友達である香奈子がいつものように私に、心配そうな顔でいつもと同じような言葉をかけてきた。 私そんなにいつもボーっとしてるかな? 自分ではよくわからない、考え事をしている間はほかのことはシャットアウトされるものだからそれのせいでボーっとしているように見えるのかもしれない。 「ごめん香奈子、考え事してただけだよ。心配するようなことはないから大丈夫だよ」
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