第一夜~絶望~

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「聖、今日……その、大事な話があるから……放課後、いいかな?」 照れくさそうに笑って、少し気まずそうに俯く奏くん。 私も予想外の言葉に少し焦ってしまう。 「え……っと……うん……」 「じゃあまたあとで」 物語の中の王子さまのような笑顔で嬉しそうに教室を後にする奏くん、私も思わず顔が緩む。 こんなこともあるんだな。 恥ずかしさを隠すために髪で顔を隠す、腰まで伸ばした銀髪。 染めたのでは無く生まれた時からこの色、ついでに言うならば瞳の色は青色、これも親からもらったもの。 名前も、顔も、声も知らない親からもらったもの……。 小さいころはよくいじめられていた、よくある話といえばそうだろう、銀髪で青い瞳で周りと全然違うものだから心無い言葉を浴びせられることは日常茶飯事だったあの頃。 嫌いだった銀髪も瞳も今では好きになった。 でも逆に、好きだったものが嫌いになったこともある。 「聖、奏くんになんて言われたの、そんな嬉しそうな顔してー」 いつの間にか前の席に座り、ニヤニヤと私に話しかける香奈子。 「ん……ひみつ……」 髪で顔を隠したままに呟く、きっといま髪をどけると顔真っ赤だろうなぁ。 「もーひーじーりー。その髪どけて顔みせやがれー」 「ちょ……香奈子、やめ……香奈子ってば」 私のゆでだこみたいになっている顔を見ようとする香奈子、もちろん私は全力で抵抗する。 「うりうりーこのー照れちゃって可愛いなーもー」 そういいながら今度は私の頭を撫でる香奈子の手、どこか懐かしいような感覚、たったこれだけのことでとても安心する。 「むぅ……」 「でもよかった、聖もいろんな顔見せてくれるようになったね。最近ボーっとしてたけど恋煩いだったのね」 恋煩い、そうなのかもしれないしそうじゃないのかもしれない、正確に言えばそうじゃない。 私には恋など無縁のものだと思っていた、思い込んでいた。 そう、無縁であったままのほうがよかった、無難に過ごして普通に生きていられれば良かった。 味を占めてしまえばもう、手遅れになった時にはもう、私の頭の中には奏くんの笑顔が優しく私に向けられる。
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