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思っていたよりもよくしゃべる、楽しげに子供のように無邪気に笑う。
そんな意外な一面に嬉しいような複雑な気持ち、奏くんは話好きのようだ。
「魔女は透明になれるとか……なんだか俺ばっかりしゃべりすぎたね」
「楽しそうだったし、私も楽しいし」
「そっか……」
辺りが少し暗くなってきた、オレンジの景気が黒に塗りつぶされる。
「あのね、大事な話って……」
「あぁーそういえばそうだったね」
隣に座っていた奏くんは立ち上がり数歩歩いて私のほうを振り返る……。
「じゃーそうだね、あまり回りくどく言いたくはないからもう素直に言うけど……」
街灯に照らされた闇の中、ニコリと笑った榊奏、私も慣れない笑顔を作り彼に向ける。
「知ってる?魔女を殺すために存在する魔女狩り専門の殺し屋。魔殺師って言われてるイカれた人間たちのこと……」
「……え?」
依然笑顔を崩さない榊奏、しかしその顔はどこか狂気を帯びていて、殺意と悪意を纏った言葉に恐怖を乗せて発せられる。
「やっと見つけたんだ、この日をどれだけ待っていたかお前にわかるか……」
解っていた、けれどこの状況は全く解らない、解りたくもない。
信じていた、けれどもう何も信じられない、信じたくもない。
「何か言えよ……グリムヒルト、忌むべき魔女、災厄の魔女」
グリムヒルト、彼の口から私に向けられた言葉、聴きなれた、そして一番忘れたかった忌むべき存在の証明。
「グリムヒルト、なんでこの言葉を知ってるの?」
私の本当の名前。
「どうでもいい、本当にどうでもいい興味もない。さっさと死んでくれ……さぁ悲劇的に劇的にそして盛大に殺し合おう」
何も考えたくない、すべて終わった。
普通の生活ももうできないだろう、私はこの瞬間にすべて失った、いやもともとこうなる運命だった。
生まれた時からずっと人として生きることはできない運命だった。
「なんで?なんで?なんで?なんで?」
「うるさいなーグリムヒルト、魔女はこの世界をゆがめてしまう存在だ、だから殺さないといけないらしい。これは絶対だ、俺はもう狂った殺人者だ、だからおまえを殺すのに何の躊躇もしない」
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