第一夜~絶望~

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ゆっくりと手を胸の高さまで挙げて狂気に歪んだ表情を一層醜悪にゆがめて彼は嗤う。 「紹介が遅れましたー俺の名前は劇作家……シェイクスピア。そして対魔女武器、俺の生み出した"悲劇"を思う存分ご覧あれ。ではではまず最初はロミオ&ジュリエット」 得意げに両腕を大きく横に開く、そしてその手にはどす黒い魔力が収束して二つのナイフを形作る。 「お前も見せろよ、さぁ悪魔の力を!」 いやだ、私は……。 「もう悪魔の力は使わない、私は何もしないから、だから……」 「だから?見逃さないよ、殺すよ。当たり前、いっただろ?俺はお前をずっと探していたんだ、災厄の魔女グリムヒルト」 その言葉とともに一気に距離を詰め、私にナイフを突き立てた、腹部に深く突き刺さったナイフをもう一度抜き同じ場所に突き刺す。 「おいおいおいおい、このままだと死ぬぞ、いいのかそれで死んでしまっていいのか?」 何度も何度も飽きることなく振り下ろされるナイフ、血液が飛び散り辺りを赤く染め上げる、私は徐々に遠のく意識の中で懐かしい声を聴いた。 『聖、あんなクズ我が焼き殺してやる。だから……枷を壊してくれ!全部消し炭にして全員殺す、お前のために!』 炎の鳥、炎を纏った巨大な鳥、不死鳥……私に宿る魔女の力の根源、悪魔である不死鳥"フェニックス"。 「でも……私はもう誰にも嫌われたくないんだ、誰も殺したくない」 『聖、我はお前のために、お前のためだけに存在する。だからお前の意思で我を解放してくれ、今のお前ならできるから』 私はどうしたいのかな、フェニックスあなたが私を信じてくれているなら。 自分で課した罰の鎖を断つ。 炎に包まれた体、反射的に飛び退くシェイクスピア、不思議と熱さを感じないそれどころか安心感を与えてくれる、ずっと一緒だった私の友達。 「灼炎のフェニックス……これが私の契約した悪魔」 ナイフに切り裂かれた腹部は完全に治癒し、まさに元通り無傷の状態に戻る。 嬉しそうに楽しそうに邪悪な笑みを浮かべるシェイクスピア、手に持っていたナイフを捨てて声をあげて笑う。 「やっと本気見せてくれたね、いいねいいねこれでやっと殺し合える。不死身の魔女グリムヒルト、流石最強の名は伊達じゃないな!それじゃー次の悲劇を演じよう……ハムレット」
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