第一夜~絶望~

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ゆっくりと今度は私に向けられた拳銃を象った悲劇オセロー。 「次は君の番だよグリムヒルト、最高傑作の悲劇を演じてくれ!主演だろ、君は主演なのさ俺はただのエキストラ!」 込められた弾丸は魔力の塊、恐怖はない既に諦めてしまっている、もう私は死ぬんだ。 「これで幕引きだグリムヒルト」 撃ち出された弾丸、確実に私を捉え私の体内で暴れるようにのたうつ魔力の波。 苦しみで立っていられない、膝から崩れ落ちそのまま倒れ、地面をはいずり必死に耐える。 「いやだ痛い痛い痛い痛い痛い……」 体中が裂けるように痛い、苦しい、口、目、鼻からどす黒い血が流れだし真っ赤に染まる視界の中でシェイクスピアは嗤っていた。 声を上げて、無邪気に狂ったその笑みをたたえた顔で私を見下ろしながら。 「これは傑作だ!!!苦しめ、けどなお前の罪はそれぐらいでは消えない!!」 「……もう……殺して……」 捻り出した言葉、しかしそんな言葉もシェイクスピアには届いていない様。 『聖、聖……もう苦しむことはない私が全部……』 あぁ、まただ……また声が聞こえる、今度は貴方なの……。 『殺してやる!』 もう好きにすればいいよ、私は魔女でこの世に私が生きる場所なんてない、だから少しだけ力を貸して、私はこの身を捧げるから! そして全部、ひとつ残らず……。 「『壊してやる』」 振り絞った声で、憎しみと怒りと苦しみと悲しみと哀しみ、あらゆる感情を込めてシェイクスピアを睨む。 全部壊す崩す、私の力で全部! 「あ?」 力を解放する、全力ですべてを壊すために。 崩壊の力を司る悪魔、崩壊の"バルバドス"私という特異な魔女が特殊な魔女が最強などと下らない称号を与えられた私が契約した二体目の悪魔。 悪魔の囁きは甘く優しいもの、しかし彼女たちは私のことをたったの一度としてグリムヒルトなどと呼んだことはない、いつも聖と呼んでくれた。 だから私は全力で彼女たちに応える、悪魔などと蔑まれても私は知ってるよ、貴方たちは人間よりも優しい。 だから私は敵と認識したものを全力で排除する、目の前にいるのがたとえ……。 『聖、お前はやっぱり優しすぎるよ』
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