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「問題はそこだけじゃない。立てられたもんをしっかり壊せていないことだ。いいか、立つ暇なく目を光らせろ。敵に隙を見せるな!」
咆哮のごとき一喝に「了解であります!! 精進します!!」と会員の声が揃う。
何人か言葉を噛んでしまう者もいるが、普段使わない言葉なのだからご愛嬌というものだろう。その後、会長からのありがたい言葉が続き、休憩時間へと入った。
会長は携帯を手に、席を外す。颯爽と歩くその背に向けて、反射的に敬礼する者が出ているが、会長はただひたすら液晶を凝視していた。きっと会長にとって、大切な用件が書かれているのだろう。かなり真剣に見ている。
「フラグラ会長の一喝は迫力ありますね」
ざわめく室内での会話は、近くにいる相手の声じゃないと聞き取りにくい。新人はふと耳に飛び込んできた言葉に首を傾げた。
「フレグラ……? フレグランスですかね」
お洒落なのかな、と片仮名に弱い新人は「格好良い!」と勝手に想像を膨らませる。自分にはよくわからない別世界の香水を頭に浮かべていた。
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