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「バカか!? 聞き間違えるなよ。フレグ……あれだ、フラグラだ」
聞き間違えている新人の頭をどついたのは、彼の先輩だ。新人に引きずられ、間違えかけた過去を抹消し、男はキリッと表情を引き締めた。
「似たようなものじゃないですか? 片仮名って苦手で、語感が似ていたら類義語です」
「そんなわけあるか!」
とんでもない理論を展開し始めた新人に対して、先輩は鋭く突っ込んだ。新人への誕生日プレゼントが辞書で決定された瞬間である。
そんな二人の後ろで、くくっと笑う声が響いた。いつの間にか用事をすませて帰ってきたのだろう。すぐ近くにいる会長の姿に、先輩は新人の頭をがっと掴んで頭を下げた。
「すいません、龍一さん! こいつはまだ入会したての新人で――」
「いや、いい。フレグランスか。興味はあまりなかったが、あいつはどう思うか……まだ休憩時間だ。ゆっくりしておけ」
自分がいたら、場が緊張してしまうと会長は手を振って去っていく。彼の手には、先程置いていった報告書が握られていた。
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