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会長が部屋から出る際に、眉間に皺を寄せ、小さく呟かれた「……加齢臭」という悩みを含んだ言葉が、誰の耳にも入っていないのは幸いだろう。
なにせ、いつの間にか築き上げられた伝説による不思議フェルターは、会長の真剣な表情に彼の戦う相手の強力さと困難さに苦悩しているように見えたのだ。まさに多大なる勘違い。
近くで会長を見れたこと。会長から直接言葉をかけられた事実に、感激する新人は先輩が語った過去の偉業を思い出す。脳内で何度もリピートしたせいか、すんなりと場面は浮かんできた。
組織は大きくなり、派閥ができた。それぞれの守りたい者は異なりながらも共に歩んできていたが、異なる部分が亀裂を呼び起こした。
定期的にある報告会ではなく、各々の派閥会長と幹部が集まる特例会は、荒れる時があるのだ。その日も亀裂が幅広い二大派閥が睨み合っていた。
『なっ、箱入り息子がいてもいいでしょう!? 可愛らしさがわからないなんて、頭おかしいわ』
和服姿の女性は、きっと男を睨みつけた。
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