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「もう勝手にいなくなるなよ」
「……うん」
「そばにいろよ。……物理的に無理でも、気持ちはそばにいてくれよ。……俺はもう」
愛しい飯田の顔を見ながら、言う。
「お前がいないなんて、無理」
飯田の砂まじりの左手が、俺の右手に重なる。
「……いるよ。ずっと。俺はお前のもんだ、拓海」
俺たちには、まだまだやらなきゃいけないことが山積みで。
俺には俺の、飯田には飯田の人生がある。
でも、これからの未来を、愛しい人と、気持ちを寄り添わせて進めたら……。
もう、何もいらない。
あいつの体温を感じながら、俺は静かに目を閉じ、幸せに浸った。
思い出すのは、いつも。
――あの夏。
思い描くのは。
あいつといる、未来。
END
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