1.春、あいつとの接点

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いつものように、図書館でノートのやり取りをする。ふと横をのぞくと、飯田は俺のノートを字面だけでなくレイアウトに至るまで忠実に写している。 「飯田、なんかこだわりあんのか?」 「何が?」 「ノート、行間とかまで完コピじゃん。そこまでしなくても……」 「ん。……こだわりっちゃ、こだわりかな」 「なんのこだわりがあんだ?」 「俺さ。お前のノート、ノートに終わらずっていうか……なんかもうアート?見た目で脳に焼き付くんだよな。それってすごいって思って。すげープレゼン能力じゃん」 「はぁ?」 「俺もそんなふうに表現できたらいいなってさ。で、こだわってんの」 誉められたんだよな?なんか照れ臭くて、返事が遅れた。 で、タイミング逃してスルーしてしまった。 しばらくノート写し、見直しと各々作業していたが、突然飯田がばたっと机に伏せた。 「はー。午後体育のせいかなぁ……。やたら眠い!」 「……確かに今日は暑かったし疲れたな。ちょっと寝たら?少ししたら起こしてやるよ」 「ホント?助かるー。んじゃ」 おやすみ、と手を振って、飯田はそのまま机に伏せて目を閉じた。 俺の方に顔を向けて。
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