1.春、あいつとの接点

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「順位表出てるぞ」 渡部に言われて、俺は職員室前に急いだ。 すでに掲示板の回りには人垣ができていて、生徒たちが一喜一憂していた。 俺はこれまで学年200人のうちで真ん中にいれば良い方、大体が中の下あたりだったので、90番台から下に向かって自分の名前を探していた。 「……ないし。どこだ?」 さすがにおかしい。150番まで来たけど、見当たらない。 そんなに下にいるはずはないが、と今度は上に向かって探し始める。 「……あった!……ってマジで?」 54位 広野拓海 マジで?信じられなかった。 これはもう、飯田にノート貸し始めてから俺に良い影響が出た、としか思えなかった。 「……っそうだ!飯田……」 「うっそ!」 12位 飯田正成 ……あいつ、頭良かったんだな。 なのに俺のノート写したりなんか……。もしかしてそんな必要なかったんじゃ……? 俺はため息をついた。 「ひーろーのっ」 人垣の向こう側で、ため息の原因の張本人が手をぶんぶん振っている。 飯田はこっちに駆け寄ってくる。めっちゃ笑顔だ。 その笑顔、女子に向けろよな。殺傷能力高いぞ。 「見てよ!12位だって!お前のおかげ!」 興奮ぎみに飯田が言う。 「……お前がもともと頭良かっただけだろ」 「いーや!絶対広野サマのおかげだって!俺、テスト中にお前のノート丸ごと頭に浮かんでたもん」 ……もんって。 まぁいいか。飯田の好成績に、俺が貢献できたのなら。 .
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