110人が本棚に入れています
本棚に追加
進学校の高2なので、進路のこともおぼろ気ながら考えている。
俺は海が好きだ。物心ついたときから水遊びに始まり、素潜りしたり遠泳したり、ただ漂ったりとにかく海に居られるなら幸せだった。
特別ロマンチストな方ではないと思う。でもなぜか海は、俺の全てを知っていて包んでくれる。そんな気がしていた。
生き物と海。そんなわけで俺は漠然と、海洋生物に関わる進路を考えていた。
「な、飯田」
実験も終わり合宿の打ち合わせ中、俺はなんとなく飯田に話したくなった。
「お前は海って好き?」
飯田は少し不思議そうな顔をしたが、ゆるく口角を上げて答えてくれた。
「好きだよ。潮のにおいっていいよな。海が近くなってくるとにおいでワクワクする」
「そっか。俺も超好き。子供のころは夏になると近くの海水浴場に週3ぐらいで通ってたんだ。さすがに高校上がってからは減ったけどな。将来海に関わる仕事したいって思うくらいに好き」
「すげー。そんなに?仕事って……ライフセーバーとかダイバーとかそういうの?」
「……キャラじゃないだろ。俺、海洋生物の研究とか興味あるんだ。進路もそっち方面考えてる」
「マジ?進路とか俺全然だよー。すげーな、広野は。なんてか、ビジョンがすごい」
「好きなものがハッキリしてるからかな。好きなもの以外はあんまり興味わかないんだ」
「頑張れよ!好きな仕事一生できたら良いな」
「ありがと……」
力一杯応援されて、ちょっとくすぐったい気分になった。
今度はこちらに向き直った飯田が聞いてきた。
最初のコメントを投稿しよう!