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「……広野はさ、夜の海って行ったことある?」
「ないけど……」
「俺、海好きって言ったけど夜の海は特に好きなんだ。月が出てたりして水面に映ってると最高。波に揺れる月影が何とも言えない。満月だとさ、海に映る光の道ができるんだ。それに夜はさ、潮のにおいも潮騒も、昼間の何倍もハッキリ感じるんだわ」
「夜か……お前ってけっこうロマンチスト?」
「あ、ばれた?」
茶化すように言うと、飯田もいつもの調子でヘラッと笑った。
茶化さずにいられなかったんだ。
夜の海の話をする飯田の眼差しが、とてもタメとは思えない大人びたもので。
――俺は心臓がたしかにドキンと跳ねたのを感じたから。
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