2.梅雨、俺はあいつを……。

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「……広野はさ、夜の海って行ったことある?」 「ないけど……」 「俺、海好きって言ったけど夜の海は特に好きなんだ。月が出てたりして水面に映ってると最高。波に揺れる月影が何とも言えない。満月だとさ、海に映る光の道ができるんだ。それに夜はさ、潮のにおいも潮騒も、昼間の何倍もハッキリ感じるんだわ」 「夜か……お前ってけっこうロマンチスト?」 「あ、ばれた?」 茶化すように言うと、飯田もいつもの調子でヘラッと笑った。 茶化さずにいられなかったんだ。 夜の海の話をする飯田の眼差しが、とてもタメとは思えない大人びたもので。 ――俺は心臓がたしかにドキンと跳ねたのを感じたから。
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