1.春、あいつとの接点

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***** 俺が通っている高校はいわゆる中高一貫の進学校というやつで、俺は結構難しい試験と倍率を乗り越えて今ここにいる。 というわけで、我が校では高校のそれも2年からの編入なんてすごく珍しい。 あいつはその「珍しい」編入生だった。 編入の理由は知らない。多分、親の転勤かなにかだろう。 前の学校も他県だけど有名な進学校みたいだし、たいした試験もなく入れたんじゃないかな。 4月。 俺は窓際の席ですでに葉桜になってしまった枝振りの良い1本を眺めながら、持ち上がりの担任が編入生を紹介するのをぼーっと聞いていた。 「イイダマサナリです。よろしくお願いします。」 黒板にはテンプレどおり、担任が書いたそいつの名前。 飯田正成。 堅いイメージな名前のわりになんかふわふわした奴だな、と思った。 少し脱色した髪色や、顔や襟足にかかる毛先の長さは一見チャラい。我が校では珍しい部類だ。 うちの学校は男子校なので、校内でモテる必要がない。 校外でモテたい奴は、それなりに外見に気を使うが、俺を含めたそれ以外の大多数は、正直髪をいじったり服のコーディネートに頭を悩ませたりするよりは、ゲームやマンガに時間を使う方が良かった。 あんま縁なさそ。それが第一印象だった。
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