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電車のドアにもたれて音楽を聞く。なんてことない、いつもの帰り道。
車窓を過ぎるマンションを数えてみたり。
……したものの、結局うわの空で。
結局、飯田は帰らなかったんだろうな。カラオケ、行ったのかな。あいつは何歌うんだろ。
やっぱ隣にはケバいのが貼り付いてたりすんのかな。あのケバい女みたいに飯田に本心丸出しでぶつかれないよな、俺。
ていうか、そもそも本心てなんだ?俺は何をしたいんだ?
混乱する。
飯田がいつも俺を気にかけてくれるのが当たり前で、俺が自分から飯田を気遣うことなんて、なかったから。
なんかクサクサする。
俺の知らないあいつが、今ごろ女に囲まれて楽しくやってるとこを想像してしまう。
……いかんいかん!なんのヤキモチだ?友達とられて悔しい、とかそんなのか?
渡部とか他の奴には、そんなこと感じたことなかった。
あいつの、飯田の俺を見るときの柔らかい眼差しとふわっとした声を思い出す。無性にあいつに会いたくなった。
……やめよう。俺は俺だ。
これまでだって、特に誰かに執着したことなんてなかったじゃないか。
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