2.梅雨、俺はあいつを……。

10/17
前へ
/87ページ
次へ
「……そうだ。海見に行こ」 学校の帰り道なのでもう夕方だけど、幸い俺の家の最寄り駅から海まで2駅だ。 俺は昔から、何か煮詰まると一人で海を見に行く。寄せる波、引く波を眺めていると、俺の悩みごとなんか小さく思えてくるんだ。あんまりダチに相談とかしないから、お前は自己解決がうまいんだろうって言われたりもする。 違うんだ。 海が、俺のモヤモヤを全部流してくれてたんだ。 電車から見える流れる景色はいつもの街並み。 俺は少し笑みを浮かべて、いつも降りる駅を通過した。 海岸近くの駅に降り立つ。 もう潮のにおいがしてる。海開きまでもうすぐだ。 夏は、日が長い。 「……あっちぃ」 スニーカーがシャクシャク砂を踏みしめながら、俺の後ろに足跡を作った。 「……ぃよっと!」 海辺を少し歩いた後、コンクリートの階段に腰かける。さっき駅で買った、ペットボトルのスポーツドリンクのフタを開けた。 日が長いと行っても、もう夕方だ。さすがに日差しが眩しいなんてことはない。 俺は水平線に目を向けた。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加