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「……そうだ。海見に行こ」
学校の帰り道なのでもう夕方だけど、幸い俺の家の最寄り駅から海まで2駅だ。
俺は昔から、何か煮詰まると一人で海を見に行く。寄せる波、引く波を眺めていると、俺の悩みごとなんか小さく思えてくるんだ。あんまりダチに相談とかしないから、お前は自己解決がうまいんだろうって言われたりもする。
違うんだ。
海が、俺のモヤモヤを全部流してくれてたんだ。
電車から見える流れる景色はいつもの街並み。
俺は少し笑みを浮かべて、いつも降りる駅を通過した。
海岸近くの駅に降り立つ。
もう潮のにおいがしてる。海開きまでもうすぐだ。
夏は、日が長い。
「……あっちぃ」
スニーカーがシャクシャク砂を踏みしめながら、俺の後ろに足跡を作った。
「……ぃよっと!」
海辺を少し歩いた後、コンクリートの階段に腰かける。さっき駅で買った、ペットボトルのスポーツドリンクのフタを開けた。
日が長いと行っても、もう夕方だ。さすがに日差しが眩しいなんてことはない。
俺は水平線に目を向けた。
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