2.梅雨、俺はあいつを……。

13/17
前へ
/87ページ
次へ
***** 「広野ー」 相変わらず、飯田との放課後図書館生活は続いている。 「行くか、図書館」 俺も飯田ともっと仲良くなるべく、3回に1回は積極的に図書館に誘うようになっていた。 「見て見て!」 「……ノート?」 「そ、俺のオリジナルのやつ!」 「オリジナルって……」 苦笑しながら飯田のオリジナルノートとやらを開く。 「おっ!見やすいじゃん」 「だろ?俺すごい?中間のあとから頑張ってたんだわー」 「これだと俺の写す必要なくね?」 「えぇっ……それは……、そうだけど、ま、でもテストだし。一緒に勉強しようぜっ」 焦ったように、飯田が言った。逆に俺は、ほっとした。 俺も正直、自分で必要なくね、とか言っといて、すぐヤバいって思ったんだ。 飯田との接点が、少ない接点のひとつがなくなるって……。 「普段どんなふうに勉強してんの?」 そういやこいつ頭良かったな、と思いながら俺は飯田に聞いてみた。 「んー。俺は教科書熟読派かな。テストに出ることって、ほぼ教科書に書いてあるだろ」 「教科書か……。だよな」 「あと数学とかは1冊の問題集を繰り返し解くかな」 なんか、シンプルだな。 「いろいろ準備したりとかあれこれ手ぇ出すの、好きじゃないんだ。俺って一途なんだぜ?」 そう言って、飯田はヘラッと笑った。 笑顔に当てられて、俺はしばらく表情を作るのを忘れていた。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加