1.春、あいつとの接点

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始業式やらなにやらがひととおり終わり、授業や部活も日常になり始めたころ。 縁なさそ、と思っていた飯田に話しかけられた。 「なぁ、お前って広野だっけ?」 「そうだけど。なに?」 「これさ、お前のだろ?ロッカーの前のとこ落ちてた。」 あ、ノート。 置き勉しまくってるから、前の時間ロッカーの中で雪崩起こしてたからな。1冊ぐらい残して扉閉めたかもしれない。 「ありがと。俺の。」 と、ノートを受け取ってそのまま立ち去ろうとしたとき。 「お前ってノート取るのうまいのな。ごめん、中身見ちゃったんだわ。」 飯田がヘラッと言った。 「そか?字ぃ書くのは好きだからな。」 これはホント。板書を無心で写すのは、ほとんど俺の趣味。中身は理解してないことが多いけど。 「いや、まじでわかりやすいって。テスト前とかお世話になっちゃおっかなぁ。」 飯田がまたヘラッと言った。 置き勉しまくってるぐらいだから取ったノートに執着はないけど、俺はなんか返しに困って苦笑で返した。 それからだ。 席も背の順も出席番号も見た目も遠い俺に、あいつがよく絡んでくるようになったのは。
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