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「拓海ってさ、いつの間に飯田と仲良くなったわけ?」
移動教室の途中、俺の地味仲間である渡部が言う。
「あいつ、飯田ってさ。三女でも人気らしいし、なんか俺らとは人種が違うっていうか……。ファンクラブみたいなのまでできたらしいぞ。」
三反田女子高校、通称三女はうちの学校と最寄り駅が一緒のお嬢様校だ。
三女にモテるというのはうちの学校ではステータスなのだが、飯田は編入してまだ1ヶ月だぞ?渡部の言うことは話半分としても、ちょっと驚きだった。
「ファンクラブって。」
どこのファンタジーだよ?てか、そんな遠巻きに騒ぐほど近寄りがたい奴か?
たしかに飯田はイケメンの部類に入ると思う。
身長は俺より5センチ以上高いから170後半だろうし、校内ではチャラく見える外見も一般受けする範囲内だし、何より顔立ちが整ってる。
……というのは、最近気づいたことで。
正直イケ様になど興味なかった俺は、とりあえずイケメン判定しただけでどこがイケてるとかの分析は、完全にスルーしていた。
「広野ー」
またあのふわっとした声が、俺を呼んでいる。
「今日さ、図書館寄ってかない?」
飯田はあの「ノート事件」の後から、ちょくちょく俺を放課後の図書館に誘うようになった。
ノートなんてコピーさせてもらえば良いのに、と渡部が言うが、俺もそう思う。が、飯田は違うようで、
「だって俺も、そんなふうに書けるようになりたいもん。」
だそうで、ご丁寧に俺のノートを見ながら自分のノートにわざわざ書き写していく、という作業に勤しむのだった。
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