1.春、あいつとの接点

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「拓海ってさ、いつの間に飯田と仲良くなったわけ?」 移動教室の途中、俺の地味仲間である渡部が言う。 「あいつ、飯田ってさ。三女でも人気らしいし、なんか俺らとは人種が違うっていうか……。ファンクラブみたいなのまでできたらしいぞ。」 三反田女子高校、通称三女はうちの学校と最寄り駅が一緒のお嬢様校だ。 三女にモテるというのはうちの学校ではステータスなのだが、飯田は編入してまだ1ヶ月だぞ?渡部の言うことは話半分としても、ちょっと驚きだった。 「ファンクラブって。」 どこのファンタジーだよ?てか、そんな遠巻きに騒ぐほど近寄りがたい奴か? たしかに飯田はイケメンの部類に入ると思う。 身長は俺より5センチ以上高いから170後半だろうし、校内ではチャラく見える外見も一般受けする範囲内だし、何より顔立ちが整ってる。 ……というのは、最近気づいたことで。 正直イケ様になど興味なかった俺は、とりあえずイケメン判定しただけでどこがイケてるとかの分析は、完全にスルーしていた。 「広野ー」 またあのふわっとした声が、俺を呼んでいる。 「今日さ、図書館寄ってかない?」 飯田はあの「ノート事件」の後から、ちょくちょく俺を放課後の図書館に誘うようになった。 ノートなんてコピーさせてもらえば良いのに、と渡部が言うが、俺もそう思う。が、飯田は違うようで、 「だって俺も、そんなふうに書けるようになりたいもん。」 だそうで、ご丁寧に俺のノートを見ながら自分のノートにわざわざ書き写していく、という作業に勤しむのだった。
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