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「なーナリ、なんで広野とそんな仲良いんだ?」
安藤の声だ。
あいつらは飯田をナリって呼んでる。正成のナリ。
「あ、俺もそう思ってた。あいつ超普通じゃん。てか、どっちかっつーと暗め?メダカの世話とかさ、お前もよく付き合ってやるよな」
こっちは陣内。
「ん?俺は楽しいけど?」
「図書館で一緒にお勉強とか、やっぱあれか?テスト対策要員?」
……テスト対策要員? 聞き捨てならない。
俺の価値はノートだけなのか?そうなのか?飯田……。
いたたまれない気持ちになる俺の耳に、聞きなれたあのふわっとした声が届く。
「正直俺テストとかどうでもいい。んー。なんていうか、あいつなんかいいなって思って」
「……。」
……俺も一瞬思考停止した。
なんかいい?あんまりよく分からない理由だったけど、また左胸あたりにキた。
思わず3人の方を見やると、飯田はなんとも形容しがたい柔らかい顔をして笑ってた。
「ま、いーけど。次は付き合えよ。お前がいるといないとじゃ女の食い付きが違うからな」
理解できない、といった顔で、陣内と安藤は教室から出ていった。
「広野ー」
俺ははっとして我に返る。
「行こ」
飯田が出口のとこでヘラッと手招きしていた。
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