第5章

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あちらには兄の目が こちらには僕の恋人とおぼしき男の目があると知りながら。 「それじゃあ先生、またあとでね」 「……っ!」 限りなく確信的な挑発――。 和樹は後ろから僕の首根っこに両手を回し 甘えるように抱きついた。 「何してる……のっ……」 焦って振り払おうにも その力は意外と強く。 「だって先生の髪、いつもいい匂いがするんだもん」 見せつけるように僕の髪に鼻を埋めてから ゆっくりと離れて行った。
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