第5章
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いつにもまして深刻な顔つきで。 誠也は僕に詰め寄る。 「あの子がいるから?」 ふわり 今になって肩先から感じる 和樹の甘い残り香。 同時に 自ずと思いだす 蕩けるような昨日の口づけ――。 「バカ言え」 苦しいほど愛しくて胸がキュンとなる。 まさに人を狂わす香だ。 「ふん、当たらずも遠からずだろ」 そんな風だから 僕の言葉に説得力なんかまるでない。
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