ぼくらはどうせばかだから

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女は飛び込まなかった。 僕は、鬼畜ではないから聞かなかった。どうして飛び込まないのかと。 問うのなら、「どうして飛び込めないのか」と聞きたい。 口の端が緩むのはどういうわけだ。 ああ、こっちを見ないでくれ。馬鹿にしているわけじゃないんだ。 たまらず背を向けた自分の肩が揺れるのを感じながら、何故こんなにおかしいのか考えたが、よくわからない。 …失礼。 僕は懸命に真顔を作って振り返った。 わ、酷い顔。いや、表情。 この人は今、何を考えているんだろう。 いずれにしろ、そんな目は止したほうがいい。 「どうしたの。今にも死にそうだよ?」 「だから、今あたしは死のうとしてるのよ!」 「そうかい。」 元気だなあ、このコ。 …おかしいな。僕は初対面の人間に、こんな風な言葉遣いはしないのに。 そもそも最初がいけない。 僕は悪くない。
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