獣の章

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彩音は再び涙声交じりに叫び、黒木の背中を叩きながら「早く逃げて!」と叫ぶ。 背後からは地を揺らすような足音が近づき、一瞬で黒木達を追い抜いて行った。 黒木が唖然とした表情で固まっていると、男性の腕を口に咥えた狂鳴虎が壁のように現れる。 「なんて……速さや……」 絶望したように黒木がそう呟いた瞬間、彩音は背中から飛び降り、すぐ近くに落ちていた石を虎の顔面に投げつけた。 狂鳴虎は一瞬顔を空に向けるが、すぐに顔を下ろして首を左右に振る。 「彩音!お前……何して……」 突然の事に驚いた黒木は、慌てて銃口を狂鳴虎の眉間に合わせる。 「隆一しっかりしてよ!こんなやつ相手にしても勝てる訳ないでしょ?今のうちに逃げよ!」 そう言って黒木と手を繋ぎ、走り出す彩音。
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