獣の章

389/510
6645人が本棚に入れています
本棚に追加
/510ページ
その声は狂鳴虎の耳にも入ったらしく、男性の頭を掴んだ状態でピタッと停止した。 黒木は彩音の耳元で「逃げるぞ」と小さく呟き、彩音をおんぶして走り出す。 流石に勝てないであろうことを一瞬で悟った黒木は、全速力で暗闇の公園内を駆け抜けて行った。 「公園の出口や!とりあえず、市街地に出て……入り組んだ場所に入れば逃げれるはずや!」 黒木は公園の外に伸びる道路を指差し、背中に乗っている彩音に話し掛けた。 「良かった……私達、助かるの?」 怯えきった声で彩音がそう問い掛けた時、背後から勢いよく何かが飛んできて黒木の行く手を塞ぐように転がる。 急に足下に転がってきた丸い物体に驚いた黒木が視線を落とすと、その物体が先程まで狂鳴虎に襲われていた男性の頭部であることに気付いた。
/510ページ

最初のコメントを投稿しよう!