獣の章

391/510
6645人が本棚に入れています
本棚に追加
/510ページ
虎への警戒を続ける黒木は、腕をバリバリと食べ続ける虎から逃げている間も、銃口だけは向けていた。 狂鳴虎の口の中に腕が全て収まった瞬間、再び勢いよく走り出す。 黒木は叫びながら狂鳴虎に銃弾を何発も浴びせるが、怯む様子は全く無い。 「殺るならワシを殺れ!!彩音に手を出すな!!」 数十メートル先にまで迫った狂鳴虎に向かって、鬼のような形相で叫ぶ黒木。 しかし、虎は直線上に居る彩音の背中に鋭い爪を振り下ろした。 首筋に爪を刺し込まれた彩音は、叫び声を上げる暇も無く地面に叩きつけられる。 「彩音――――――!!!」 狂ったように泣き叫ぶ黒木を邪魔だと言わんばかりに尻尾で弾き飛ばす狂鳴虎。 振り切った尻尾の一撃をまともに脇腹で受けた黒木は吹き飛び、数台残っている駐輪場の自転車に背中から激突した。
/510ページ

最初のコメントを投稿しよう!