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「安西ディレクター! 安西ディレクターじゃないですか!」
安西の背中に声が掛けられた。
安西が振り返ると、同い年の優男が手を振った。昔、局で視聴率を争っていたディレクターだった。
懐かしさよりも疎ましさが蘇る。できるなら関わりたくはなかった。振り返った己を呪ったが遅かった。
「元気ですか? 奇遇ですね」
相変わらず嫌な顔だ。昔と変わらない。名前を豊島幸太という。
安西は、豊島との視聴率争に負けて、ディレクターを辞めた。退職金はたんまりとある。
コインロッカーのジュエリーサバンナはものので気心で盗んでしまっただけなのだ。とはいえ、厄介な男に見つかった。安西はどうはぐらかそうかと考えながら足を止めた。
「豊島。なんでこんなところに?」
慌てた安西は、豊島の後ろに隠れるように立っている男に目を奪われた。
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