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「なんでって。ロケっすよ。ロケ」
「こんな街中で、侍かよ」
「悪いかよ。今流行りのチャンバラ劇だ。まさか、知らないのか?」
豊島が鼻で笑う。
「知らねえな。本なんか読まねえもん。そいつは主人公か? 脇役か?」
豊島の背後に隠れるようにして立っていたのは侍であった。メイクも衣装も本格的なのはいいが、このネオン街には似合わない。確かにその先にロケ班が用意した背景や機材が見えたが内容まではピンと来なかった。
「主人公、吉良役の水浦佑真です。宜しくお願いします」
侍役が緊張した声音を響かせた。役者歴はどうなんだろうか。あまり聞かない名前だった。
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